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東京高等裁判所 昭和24年(新を)3128号 判決

被告人

増田正

主文

本件控訴は之を棄却する。

当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

弁護人原秀男の控訴趣意第一点について。

記録を精査するに、原審において昭和二十四年九月二十六日午前十時の第一回公判期日につき被告人に対して刑事訴訟法第二百七十五条刑事訴訟規則第百七十九条所定の猶予期間を置いて召喚状の送達を為した事実を認め難く、且つ之に対し被告人から異議を申立てたか否かも特に記載ないこと所論のとおりである。然し、被告人は現に右公判期日に出廷し弁論が為されたことは其の公判調書によつて明らかであり、且つ同調書に前記異議申立のありし旨の記載ない、以上反証のない限り其の申立なかりしものと推定すべきは当然である。而して元来此の猶予期間をおいて召喚するのも之により公判に対する被告人の準備期間を与えて其の権利を保護しようとするに外ならないから、右の如く結局被告人において異議なく公判期日に出廷し、弁論が為された以上、其の公判手続を以て敢て違法無効のものと為すべき根拠はない。論旨は理由ない。

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